Q1. 給与計算は、自分でできますか?
できます。実際多くの中小企業様と接している中で、小さな会社も含めて多くの会社が自社で給与計算を行っています。
給与計算ソフトを使用する場合はもちろん、エクセルや手書きで計算されている会社も多いですので、ぜひ一度チャレンジしてみましょう。
■外注する場合と手間は大きく変わらない
外注する場合でも、従業員情報や支給水準、勤怠管理など、給与計算完了の一歩手前までは結局自社で管理し外注先と連携する手間が生じます。
この各従業員の基礎データがあり、その月の額面支給額が決まってしまえば、後は給与計算や給与明細はほぼ自動的に出来上がるものです。
給与計算ソフトや仕組み化されたエクセルに額面金額を入れるだけで出来上がってしまいます。
外部に依頼するよりもスムーズにミスなく、何よりも低コストで完結することができます。
■選択肢が広がる給与計算ソフト
従来型の給与計算ソフトでは、年間の使用料が5万円~十数万円ぐらいするものが主流でした。
それが近年のWEBサービスの発展や低価格化、無料化の流れの中で、給与計算ソフトにも選択肢が広がってきました。
代表例が、【フリーウェイ給与計算】
計算対象者5名までの場合、なんと0円でずっと使用することができます。
操作性にやや難はありますが、給与明細や社会保険の年次手続き書類、年末調整までしっかり対応しています。
経理担当者がおらず、事務的な余裕がない会社でも、給与計算だけは自社で行い、会計入力や年末調整は専門家に任せる、というスタイルが、効率性とコスト面から考えるとおすすめできます。
Q2. 給与から天引きする金額のしくみが難しい。
給与から控除する金額は、種類も多く一見複雑に見えますよね。
それでも一度仕組みを理解してしまえば、とてもシンプルに見えてくるかもしれません。
主な控除項目は次の通りです。
■厚生年金・健康保険料
社会保険に加入している方に必要な項目です。
受給者の給与水準をもとに金額が決定され、その金額を毎月の給与から控除します。
厚生年金・協会けんぽの組み合わせの場合、こちらのHPで確認することもできます。
■雇用保険料
毎年4月に料率が変わる可能性がありますが、業種により額面の支給額に対し0.3~0.5%程度を控除することになります。
料率は、こちらのサイトなどで確認できます。
■所得税
社会保険料控除後の支給額や扶養親族の人数などをもとに計算します。
(令和4年分 源泉徴収税額表)
■住民税
各人の前年の所得金額をもとに、市区町村が計算・決定した金額が、毎年5月ごろに通知されます。
その通知された金額をそのまま控除していくことになります。
Q3. 年末調整はどんなことをするの?
毎月の給与から取得税は控除していきますが、これはあくまで概算の金額です。
所得税は1年間の合計所得から、様々な控除(生命保険料控除、配偶者控除など)を引いて課税対象額を計算し、税額を確定させます。
そうすると概算で引いてきた所得税と、確定した所得税とに差異が出てきます。
これら一連の計算を行って、差異を精算する作業が「年末調整」です。
会社としては、年間の支給額や控除額はすでに分かっているため、あとは給与受給者から個別の事情(所得控除などを適用できるものがあるかどうか)を記入した書類を提出してもらいます。
・給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
・給与所得者の保険料控除申告書
・基礎控除・配偶者控除等の申告書
これらの情報をもとに計算していきますが、この作業で各人の所得税等が確定することになるため、不安があれば専門家のサポートを受けてもよいでしょう。
年末調整が終わると、「源泉徴収票」を作成して給与受給者に交付します。
Q4. 社会保険の加入と納付について
■厚生年金・健康保険
会社の場合は強制加入となるため、社長1人の場合でも加入する義務があります。
設立度ずっと加入してこなかったという会社もあると思いますが、順次加入に関する案内が送付されていると思います。(特に一定水準の給与を支給している場合)
保険料の納付については、会社負担分と本人負担分の合計を毎月会社が納付することになります。
※毎年7月に、4~6月の給与支給実績を記入した「被保険者報酬月額算定基礎届」という書類を提出します。
これをもとに9月分から1年間の保険料率が決定されます。
■雇用保険
労働者を1人でも雇用すると、加入義務があります。
社長や役員、同居の家族は基本的に対象外になります。
従業員からは毎月天引きすることになりますが、納付については労働保険料とともに年額を7月頃に一括で、又は7月・10月・1月の3分割で納付することになります。
※6月~7月10日までの間に、前年4月~当年3月までの給与支給額をまとめた書類を作成して、年度更新の手続きを行います。
(厚生労働省:労働保険の適用・徴収)
Q5. 役員報酬はどう決めればいい?
■期首3か月以内に決定
役員報酬が税金計算上の損金に算入される要件として「定期同額給与」というものがあります。
これは毎月同額の給与を支給している場合に限って損金を認めることで、業績をみながら利益調整目的で社長の給与を調整することを防ぐための規定です。
この規定の中で、金額の改定を認められているのが、年度開始後3か月以内なのです。
毎期、決算・申告が固まる時期などに、新年度の見込みを立てながら役員報酬金額の改定を検討すると良いでしょう。
■ボーナスの支給は考えない
こちらも、損金算入の基準からの制限です。
基本的に役員に対するボーナスは、事前に(株主総会等で支給の決議をした日から1か月以内)税務署に届け出を出した日時と金額の通りに支給されたものだけしか、損金に算入することができません。
実質的にこの制度を利用するメリットもありませんので、役員に対する報酬は月次のみで反映させ、ボーナスは考え無くて良いでしょう。
■支給水準
特に社長の場合、会社と個人は一心同体なので、稼いだお金を会社に残すか個人に残すか、役員報酬の水準で調整することになります。
あまり多くの報酬を出してしまうと、所得税率が高率になり、社会保険料負担と合わせるとロスが大きくなります。
逆に少なすぎると生活費が足りず、会社のお金を使いこんでしまう、ということにもなりかねません。
法人税率・所得税率・社会保険料率と、次年度の業績目標(見込み)から、会社と個人の税金負担合計が最も低くなる水準をシミュレーションして決定する、というのも良い方法です。
今後の事業展開や、生活スタイルなども考慮しながら、最適な水準を検討していきましょう。