事業者にとって、消費税の納税はとても負担感が強く、決算のたびに消費税の納税額に気が重くなります。
そんな決算時に確定する消費税ですが、当期(決算対象の年度)か翌期のどちらの損金(必要経費)に算入されるのでしょうか?
結論から言いますと、消費税の経理方式によって取り扱いが異なり、次の通りになります。
・税抜き経理の場合・・・当期の損益に計上
・税込み経理の場合・・・当期か翌期か選択することができる
それでは順次ポイントを見ていきましょう。
税抜き経理の場合
税抜き経理を行っている場合、売上高も仕入や経費も全て、損益は消費税抜きの金額で計上されていきます。
そして消費税相当額は、別枠で負債科目である「仮受消費税等」、資産科目である「仮払消費税等」という科目で集計されていくことになります。
誤差は出ますが、大まかに言うと、この「仮受消費税等」と「仮払消費税等」の差額相当を、事業者が納付することになります。
損益科目を使わわず、仮受・仮払・差額を納付、という流れになるため、損金計上時期の問題は基本的に出てきません。
【簡易課税の場合は注意】
消費税の計算で簡易課税制度を選択している場合、この「仮受消費税等」と「仮払消費税等」と納付する消費税額に差額が生じることが多くなります。
例えば以下の事例では、仮受-仮払で計算すると消費税額は4,000となるところ、簡易課税制度で計算すると納付額が2,500となっています。
仮受消費税等 5,000 | 仮払消費税等 1,000 |
未払消費税等 2,500 | |
雑収入 1,500 |
差額の1,500が「雑収入」として収益に計上されることになります。
この「雑収入」(場合によっては「雑損失」)については、この決算対象の年度の損益に計上する必要があります。
翌期に回すことはできません。
【税抜経理方式を選択適用した場合】
国税庁タックスアンサー
・・・簡易課税制度による納付すべき税額と、上記の仮受消費税等の合計額から仮払消費税等の合計額を控除した金額とは一致しません。
そこで、この一致しない差額は、次により清算します。
なお、いずれの場合も、清算する時期は差額が生じた課税期間を含む年または事業年度です。
・・・その差額を雑収入として総収入金額または益金の額に算入します。・・・
税込み経理の場合
一方、税込み経理を行っている場合、売上高も仕入や経費も全て、消費税が含まれた金額で計上されていきます。
そして納付する消費税額は「租税公課」という経費の科目で計上されることになります。
そこで問題になるのが、決算時に発生する消費税額がいつの損金(必要経費)に計上されるのか?ですが、次のような取り扱いになっています。
原則:その申告書が提出された日の属する年又は事業年度
⇒申告書を提出するのは「翌期」に入ってからなので、原則は「翌期」の損金(必要経費)に計上されることになります。
特例:決算で未払計上した場合、計上した年度=「当期」の経費に計上できる
⇒決算処理の際に、
租税公課 ○○ / 未払消費税等 ○○
この仕訳を入れることで、「当期」の経費に計上できます。
逆に、経費計上を翌期に回したければ、この仕訳を入れなければよい。ということになります。
この取り扱いは、毎期同じ基準で処理しなければならないといった縛りもないため、実質的に当期か翌期の計上時期を選択することができることになります。
課税所得額や繰越欠損金残を考慮して判断
会計の考え方からすると、当期に発生した消費税なので、当期に計上するのが原則ですので、特に支障がなければ毎期未払計上していきましょう。
一方で、次のような場合に限っては、2期合わせた税負担額に損得が出てきますので、賢く判断していきたいところです。
【個人事業で、当期は特殊要因で所得が少なく、所得控除が使いきれないケース】
未払消費税等を計上したところで、所得控除を使い切れない水準なのであれば、計上せずに翌期に回しましょう。
翌期にしっかり所得が出れば、この経費計上が生きてきます。
例えば消費税額50万円で、翌期の税率が20%とすると、10万円の節税効果が出ることになります。
【法人で、当期末で消滅する繰越欠損金残高がある場合】
できるだけ当期の所得を大きくして繰越欠損金を使いたいところです。
そんなときも、未払消費税等は計上せず、翌期に回しましょう。