会社を経営していると、常につきまとう漠然とした不安感。
今後の経営状況など様々ありますが、「税務署」「税務調査」も不安材料の一つではないでしょうか。
もし税務調査が入った場合、絶対に避けたいものとして、「重加算税」があります。
これが課される・課されない、が、いわゆる「脱税」かどうかの境界線とも言えます。
では、この「重加算税」がどのような場合に課され、どんなペナルティがあるのかを見ていきたいと思います。
法人税の税務調査で脱税の指摘を受ける割合は?
会社に税務調査が入った場合、何かひとつでも間違いを見つけないと、調査官は帰ってくれない。。。
などという話を耳にした人も多いと思います。
そのため、あらかじめ簡単な間違いを用意しておいて、税務調査の際にその小さな間違い(いわゆる「おみやげ」)を持って帰ってもらう。
はるか昔はどうだったかわかりませんが、少なくとも現在では、きっぱり、「おみやげ」は必要ありません。
国税庁が公表している、法人税の税務調査の統計情報でも、例年実地調査の件数のうち、3割近くが修正なしで終わっています。
少なくとも、何が何でも指摘事項がなければ帰らない!という状況ではないことがわかります。
逆に、7割強は何らかの指摘を受け、修正申告などを行っていることになります。
そしてこのうち「重加算税」が課された、いわゆる「脱税」と認定された割合が2割にも及ぶのです。
この重加算税の割合、私の税理士としての実務感覚からしても、かなり高めの割合に感じます。
重加算税の要件とは?
重加算税が課される基準は国税通則法という法律で、次の通りとされています。
「~計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し~申告書を提出していたとき~」
ポイントは、事実を「隠ぺい」または「仮装」した、という部分です。
売上を隠したとか、架空の外注費を計上したとか、意図的に積極的に行ったもの=脱税、がこれにあたります。
●重加算税の対象になるもの
具体的に重加算税の対象となるかならないかについては、国税庁が公表している指針が大変参考になり、そこから考えると次のケースは重加算税の対象となります。
・売上の一部を現金でポケットに入れた。隠し口座に入金した。収益にならないよう別科目で処理した。
・架空の人件費や外注費を計上した。
・領収書等を改ざん、偽造した。
・都合の悪い証ひょう書類を隠した、廃棄した。
・棚卸しを意図的に少なく記録した。
●重加算税の対象にならないもの
・事業に関係のないレシートを経費に入れていた(認識違い)
・期末付近の売上をその期に計上せず、翌期に計上していた(期ずれ)
・経理担当者や会計事務所の経理処理ミス
・ずさんな経理処理・管理によって売上の一部が計上もれになっていた。
このように、重加算税は「意図的に」行った脱税行為を対象としているので、普段の心がけ一つでほぼ確実に避けられるものです。
「売り上げは隠さない」「架空の経費は入れない」「書類は改ざんしない」「事実をねじまげない」
ぜひこれらを意識しておきましょう。
重加算税のペナルティ
というのも、重加算税には大きなペナルティが待っています。
●追徴税額が35%上乗せに
税務調査で指摘で指摘を受け発生した法人税が、例えば100万円。
これは本来支払うべきものなので仕方がありませんが、これにプラスして35万円(35%)の重加算税がかかってきます。
●常習犯には追加税率が45%に増加
2017年以降、罰則が強化されています。
「無申告」や「重加算税」で罰則を受けるときに、過去5年以内に「無申告」や「重加算税」を受けた履歴がある場合、税率が10%アップすることになりました。
すなわち重加算税は45%かかることになります。
●延滞税が大幅にアップすることも
修正申告などで追加の税金を払う場合、本来の納付期限を過ぎてしまっているので、基本的に「延滞税」という利息相当のペナルティがかかります。
しかもこの「延滞税」は年率約9%という法外な利率がかかります。
税務調査は過去数年分さかのぼってチェックされるため、延滞期間がとても長くなることがあります。
そのため、悪質でない通常の修正申告などの場合、最大で1年分しか課さないという特例があるのですが、重加算税が課されると、この制限がなくなります。
3年前の申告内容について100万円の追徴があった場合、100万円×9%×3年分=27万円の延滞税がかかる計算になります。
重加算税と合わせると、実に62万円のペナルティが課されることになります。
●税務署のブラックリスト入り
一度重加算税がつくと、「脱税志向あり」ということで、税務署からマークされることになります。
それ以降、定期的に税務調査が入ることになり、チェックも当然厳しくなります。
そして再度不正が見つかると、上記の通りペナルティが加算されるというスパイラルに陥ります。
このように、重加算税には大きなペナルティがありますので、これだけは避けるように普段から心がけるべきです。