自己所有のマンションや土地を貸付けて収入を得ると、不動産所得となります。
その貸付が「事業的規模」で行われている場合は、青色申告特別控除65万円が適用できるなど、認められる経費等が多くなります。
では、その判定基準やメリットを確認していきましょう。
事業的規模かどうかの判断は?
その不動産の貸付が事業的規模かどうかの判断は、通常いわゆる「5棟10室基準」と呼ばれるもので行います。
これは所得税基本通達26-9で公表されているもので、基準は次の通りです。
・貸間、アパート等については、貸与することができる独立した室数がおおむね10以上であること。
・独立家屋の貸付けについては、おおむね5棟以上であること。
◆物件を共有している場合は?
例えば12室のマンションを1棟、兄弟で50%ずつの持分で共有している場合、自分の持分割合で言うと6室分相当になるため、事業的規模かどうか疑問がでてきます。
この場合でも、共有物件自体が基準を満たしていればOKです。つまり兄弟それぞれが「事業的規模」として申告することができます。
◆貸室と貸家の両方を所有している場合は?
例えばワンルームマンション5室と貸家3棟を運営している場合。
貸室と貸家の単位をそろえる、すなわち貸室2室を貸家1棟分と換算して判定します。
すると、5室⇒2.5棟+貸家3棟 で合計5.5棟。
事業的規模を満たします。
◆駐車場の場合は?
5件を貸室1室に換算するのが一般的です。よって駐車場だけの場合5×10=50件以上の台数が必要となります。
◆空室の場合は?
一時的に空室でも、借主の募集を行っていたり、いつでも貸せる状態であれば、カウントしてよいでしょう。
事業的規模の場合は、所得計算上のメリット大!!
・確定申告の際、65万円の青色申告特別控除が適用できます。
⇒複式簿記や貸借対照表の添付が必要などの要件はありますが、毎年65万円の控除は大きなメリットです。
所得税率が10%の所得水準の場合だったとしても、住民税10%も合わせると、
★毎年約13万円の税金が抑えられます。
・青色事業専従者給与の経費算入が可能となります。
⇒実は不動産所得の場合、事業的規模を満たさない限り、専従者給与の適用を受けることができません。
賃貸事業に専従している家族がいる場合、これが適用できると節税メリットは大きいです。
・老朽化等により、業務用資産の取壊しをしたり、除却等をした場合の、損失の全額が経費に算入できます。
⇒これらの損失により、不動産所得が赤字になった場合に、給与所得などの他の所得と損益通算ができるようになります。
・賃貸料等の回収不能による貸倒損失がその年分の必要経費に算入が可能となります。
⇒不思議な話ですが、前年以前の賃料未回収分が回収不能と確定した場合の貸倒損失は、事業的規模でないと計上することができないのです。
・所得税を延納をした場合に係る利子税で不動産所得対応分が経費算入可能となります。
不動産所得となるもの、ならないもの
最後に、不動産所得になるかどうか迷いがちなケースの例を挙げてみたいと思います。
◆広告等のため、土地・家屋の屋上又は側面、塀等を使用させて得る所得は不動産所得になります。
◆下宿のように、食事などを提供する場合は、不動産所得ではなく事業所得又は雑所得となります。
◆国税庁の見解によると、いわゆる「民泊」は、一般的に、利用者の安全管理等の提供等を伴うもののため、不動産所得ではなく、雑所得に該当することになります。
◆有料駐車場については、自己の責任において車を管理する時間貸しの駐車場は事業所得又は雑所得。
車の管理責任を自己が持たない場合、月極めの場合は不動産所得となります。
⇒最近拡大中の駐車場シェアリングサービス「akippa(あきっぱ)」なども、不動産所得ではなく、雑所得などに分類されるでしょう。